溺愛CEOといきなり新婚生活!?
Extra edition

 十月に入り、街並みが秋色にほんのり色づいてきた。

 四つある季節のうち、どれが好きか問われたことがあったけど、もれなく秋と答えるようになったのは、この恋をしてからだったと記憶している。


「九条、御門建設まで急いでくれるか」
「かしこまりました」

 先方の副社長も多忙なお方だ。永井社長も忙しくされているけれど、花澄さんと生活するようになってからというもの、幾分か余裕のある過ごし方をしている。



 三十五階建ての総合建設業社、御門建設。
 日本一のスーパーゼネコンにこうしてやってくるのは何度目だろうか。


 社長が打ち合わせを終えるまで室外で待機したり、時折先方の運転手と雑談して待つこともある。


「永井社長の元で働いていらっしゃるなんて、羨ましいです。うちは副社長の逆鱗に触れると寿命が縮む思いですよ」
「あはは、大げさな」


 永井社長の穏やかな人柄とは違って、御門建設の副社長は外見通り『冷徹』な人のようだ。


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