Hello my sheep

黒い髪の


知っている顔、

知っている顔、

知らない顔、

知っている顔、

知らない顔、

知らない顔、

知らない顔、



「ヨーウカ?どしたの?ぼーっとして」



桜の舞う午前。

春休み明けの入学式。

区内に二つある小学校の卒業生達が通う一つの中学校。

新しい制服に身を包み初対面と知り合いの入り混じる喧騒を行くのは奇妙な気分で、


「ちょっと、ヨウカってば」

「へっ」


しばし茫然としていた八鹿(ヨウカ)ははっと我に返る。

同じ制服姿の幼なじみ、汐見 奈緒(シオミ ナオ)が呆れ顔でこちらを覗き込んでいた。

背が高く面立ちの大人びた少女で、セーラー服に着られることなくごく自然にその身に馴染ませている。


奈緒と八鹿は幼稚園からの付き合いだ。
度々意識をふわりとどこかへとやってしまう八鹿の性格にすっかり慣れている奈緒は特にそれに触れる事はなく、止まることなく人が入って行く昇降口へと八鹿を急かした。
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