秘め恋*story1~温泉宿で…~
*story1
~温泉宿で…~
「いらっしゃいませ。
ようお越しくださいました。」
にぎわう温泉街から少し入ったところにある
一軒の温泉宿の暖簾をくぐると、淡いすみれ色
の着物を着た年配の女将さんが暖かい笑みで出迎えてくれた。
「すみません、急な予約で。なかなか空いてる所がなくてどうしようかと思ってました。」
「いいえ。そんなことございませんよ。
たまたま急に団体さんのキャンセルがあったものですのでねぇ。ささ、御上がり下さい。」
小さなトランクの持ち手を畳ながら申し訳なく言う私に女将さんは柔らかい口調で迎えてくれた。
促されるままに中へと上がり、案内されるがまま部屋へと足を運んだ。
長い渡り廊下の窓の外を見ると、そこはちいさな庭園になっていて、色とりどりの花が咲き乱れていた。
また後で行ってみよう…そんなことを思っていると、今夜泊まる部屋に着いた。
純和風の部屋。
窓際にある椅子に座ると、自然と深く息を吐いた。
独りぼっちの部屋にやけに大きく耳に伝わる…
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