日常に、ほんの少しの恋を添えて

決意のガトーショコラ

「あけましておめでとうございます」

 年末年始休み明け。新年となって初めての出社日。秘書室で出会う社員に挨拶をして、いつも通りの業務が始まる。
 そう、いつも通り。ただ一つ、湊専務がいないことだけを除き。

「長谷川さん、足の具合はどう? 少しは良くなった?」

 挨拶を済ませた後、花島さんが心配そうに尋ねてきてくれた。

「はい。年末年始は親が車で迎えに来てくれたので、実家でのんびりしてました。まだ無理は禁物ですが、普通に歩くことはできます」
「そう、それならよかったわ。長谷川さん、今日から新しい専務の担当となります。よろしくお願いしますね」
「はい」

 新しく役員となられる社員のスケジュールチェックをして、早速役員室に挨拶に向かおうとすると、花島さんが「長谷川さん」と私を呼び止める。

「はい」
「ごめんね、ちょっとだけ。先月の湊専務の最終日。私びっくりしたことがあってね」
「? びっくり? ですか? 専務のことですか?」

 そうなのよ! と花島さんにしては珍しく興奮気味で話し続ける。

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