エタニティ
陽希に抱いて欲しかったのは本当。

今この手にしている幸せを、確認したかったから。

でも、それを陽希に指摘されるなんて、恥ずかしすぎる。


想い出をぶら下げて、陽希に会いに来たつもりなんて無かったけれど、彼にはそう感じたようだ。


夕べ伝えたかった私の気持ちは、こんなのじゃなかった筈。


上手く言葉を扱えないなんて……編集者失格か、私。

赤い顔のまま、意を決して陽希を見詰める。

「……今が一番幸せって思ったから、ハルに会いに来たの。それを言いたかったの。それでハルに抱い」

陽希は私の口元を手で押さえて、言葉を遮る。

そして「ごめん、苛めすぎた」と彼にしては珍しく、はにかんだ表情で項垂れた。

「……俺ね、多分美知佳さんが思ってるよりも、美知佳さんのこと好きなんだ」

私の肩におでこを摺り寄せながら、たまに自分の気持ちと折り合いが付かくなるから困る、と呟いた。

やはり陽希は、心中穏やかではなかったようで。

こんなに想っているのに。


「ずっと、そばにいて」

私は陽希のおでこに話し掛ける。

「……それってプロポーズ? 美知佳さん」

私を見上げた陽希の瞳があまりにも優しくて、その表情から目が離せない。

陽希はクスクス笑い出すと、私の肩をガブリと噛んだ。

「痛っ、何で噛むの」

「取り敢えず、もっと食べようかと思って」

「もう無理」

「イヤッて言っても、離さないって言ったじゃない。諦めてよ、美知佳さん」

ハルは私の体に腕を回して、ギュッと強く引き寄せた。
< 20 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop