やわらかな檻
 カチャリ、と電話が切れる音。


 耳元に当てていた受話器を元の場所に戻すと、私は後ろから抱きすくめられているこの状況をどうにかしようと身を捩らせた。

 本当に何も無く、呆れてしまうくらい広過ぎる和室に似合わない立て掛け式の電話。


 中性的とはいえ平均身長の私をすっぽりと包んでしまうほどに身長が高い彼は、こうやって私が嫌がるほどぎゅっと力を強めていく。

 こんな所、電話越しに話していた彼には絶対に見せられない。


「小夜。……今のは誰ですか?」

「幼馴染み。慧には関係ないでしょう。それより、湯冷めするから離して」
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