やわらかな檻
 あぁもう、このままでは浴衣が肌蹴るじゃないの。

 私は小さく舌打ちをしてから顔だけを彼に向け、真正面から彼をキッと睨みつけた。

 対する彼は、微笑みすら浮かべて凄く凄く満足げな表情。

 どうやら、無視されるよりかは睨みつけられる方がマシらしい。

 というよりも、私の反応を楽しんでいる節さえある。なんて男。


「離しません」
「……離して。怒るわよ、もう。私が誰と付き合おうが、慧の知ったことじゃない」

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