やわらかな檻
 雲一つない空と、庭に出たとたん蝕んでくる陽気。
 日光を照り返す白砂。

 知らない間に梅雨が明けていたらしい。カレンダーがないから忘れていたが、そういえば外の季節は夏だった。

 今日も散策につき合わされるのかと思うと、心底、うんざりした。



 遊び相手たる彼女との交流を通じて、親が何の期待をしているのかは知らない振りをしている。


「ここでご本を読んでも良い?」
「どうぞ」
「ありがとう」


 微笑む彼女はなるほど、親がこの子なら捻くれた愚息の相手も出来るだろうと打算してしまうくらい、可愛い。
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