やわらかな檻
 それに頭も良いのだろう、交差させた腕の中にある本は世界の名作を小学校高学年用に書き換えたものだ。

 半分が絵で埋められているような本を読んでいたっておかしくない年頃なのに。

 陣取っていたソファの真ん中から端に移動すると、空けた分に彼女が遠慮がちに座る。

 日焼け止め特有の甘ったるい匂いがした。

 本を開いたかと思えば暫く居心地が悪そうにもぞもぞして、結局、ソファを背もたれにして畳に直接座る格好で落ち着いた。

 ソファの上で長いおかっぱが広がる。何となく目が行った。


「今日は外に出ないんですか」


 無理に視線を引き剥がし、声をかけた。
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