今夜、俺のトナリで眠りなよ
―一樹side―
 さっきから煩いくらいに家の電話が鳴っている。

 俺はベッドの中で身体を起こすと、携帯で時計を確認する。

「夜中の3時だぞ。うるせーな」

 4回目の電話で、俺は部屋を出て二階の廊下に置いてある子機を手に取った。

「はい、増岡です」と俺は、不機嫌な声を出した。

『夜分遅くに申し訳ありません。小早川です』

 か細い女の声が、電話の向こうから聞こえてくる。

 小早川? って、桜子の旧姓じゃん。

『優樹さんですか? 桜子の母ですが……』

「一樹です」

『あら。優樹さんは寝ていらっしゃるのかしら』

 愛人宅で寝ているかもな。この時間じゃ。

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