今夜、俺のトナリで眠りなよ
「兄貴はいません」

『仕事中なのかしら。携帯に電話したんですけど、電源が切れているみたいで』

「ああ……どうでしょうね。何かあったんですか?」

『え? あの。桜子が家を飛び出しまして』

「はあ?」

『終電も終わっているのに。歩いて家に帰るって、言い張って。主人は、勝手にさせろって言うんですけど、やっぱり心配で』

「いつですか? 何時頃に……」

『一時過ぎなんですけど』

 もう2時間近く過ぎてんのか。

 くそ。もっと早く電話に出れば良かった。

「わかりました。俺がなんとかしますから」

『すみません。一樹君に頼むなんて……』

 兄貴じゃ、何にもしねえよ。

 桜子の父親同様で、勝手にさせろって言うだけだ。
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