窓際のブラウニー
「さ、時間はたっぷりありますよ。僕にできることはありますか?」
この顔が好き。
ひげも濃くて好き。
彫刻のように彫りの深い顔。
太い指。
綺麗な爪。
「真千子さん、そんなに僕を見つめると、口説いてしまいますよ。」
冗談で言っていることはわかっているのに、『本当に口説いてほしい』と心のどこかで
思ってしまう自分がいた。
「早く笑顔見せてくださいよ、楽しみにしてたのに…そんなに悲しい顔じゃ、僕心配で眠れないですって。」
田所さんは、大きく息を吐いて、視線を天井のシーリングファンに移した。
ゆっくりと回る茶色い羽根を見つめながら、田所さんはあごひげを触る。
人を好きになると、その人に触れたいと思う。
そのあごひげにとても触れたいと思ってしまう私は、
もう田所さんに恋をしているのだろう。