Line【密フェチ】

気が付けば、彼女の柔らかな体を抱きしめていた。


僕の行為を返事と受け取ったのか。


彼女も僕を抱きしめ返した。


そして――。


背中に回された手が妖しく蠢き出し、シャツの中に潜んで肌を直に滑り始める。


遠慮がちだった指先は次第に大胆になり、指の腹から次は手のひらで。


肌の感触を楽しむ。


手の動きも下から上へ。


撫で上げるようなものへと変わっていた。


「……イン」


「えっ?」


「綺麗なライン」


「……」


「ずっとなぞってみたかった」


いつの間にかシャツのボタンが外され、慣れた手つきで脱がされていた。


晒された上半身に熱い視線が注がれる。


その瞳に映し出されているのは明らかな欲情。


そんな目をされたら――。


聞かずにはいられなかった。


「好き……なんですか?」


再び体を弄んでいた彼女は、動きを止めて顔を上げた。


「僕の事が……」


その言葉に目を瞠ったが、それもほんの一瞬だった。


彼女はただ笑みを浮かべるだけで、何も答えない。


「……っ!!」


今度は舌で首筋のラインを舐め上げられた。


手の動きだって止まってはいない。


背中を這い回り、脇腹を撫でられて――。


エスカレートする行動に体は昂ぶる。


一方で、心は冷や水を浴びせられたみたいだ。


彼女の不敵な微笑みに答えを垣間見た気がする。


本当に性質が悪い。


煽るだけ煽って。


僕だけこんな気持ちにさせて。




――特別な感情がないなら、それは悪意だ。
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