銀棺の一角獣
 残酷なことをする、とは誰にも言えない。身を切られるような想いをしているのはアルティナもルドヴィクも同じなのだから。


「……残念です」


 言ってもしかたがないこととデインもわかっている。それでも口にせずにはいられなかった。

 半年前に想像していた未来が、がらがらと崩れていく。数年前に病死した王妃も、こんな不安そうな面もちで他国に向かう娘の姿なんて、考えもしなかっただろう。


「言っても、しかたないわ。わたしも……そう思っている。でも、どうしようもないもの」


 何も考えないでいられた子どもの時代は終わってしまったのだ。

 今、この国を背負っているのはアルティナだから――女王としてできる限りのことはしなければならない。それが、王の血を受け継ぐ者の運命。


「――デイン。少し、出てきてもいいかしら?」

 宰相に断って、アルティナは席を立った。
< 11 / 381 >

この作品をシェア

pagetop