おかしな二人
車内は、いつものように無言の空間だった。
おしゃべりなあたしも、今日は言葉をなくしてしまっているから余計だ。
いくつもの電飾と街灯が燈る夜の中。
車は、ただひたすらに家路を辿る。
初めて助手席に乗ったあたしは、隣で運転する水上さんのほうを恐くて少しも見ることが出来ない。
だからほんの少し首を左に向け、流れて行く夜の街をぼんやりと眺めながら考えていた。
今、総てが中途半端になっている。
凌がなぜ抱きしめてきたのか解らないし。
どうして水上さんが、あそこへ現れたのかもわからない。
本当は、兄がいることも話していないし。
水上さんがさっき言った言葉も、聞き取れずわからないままだ。
そして、この胸を痛める理由も――――。
さっき溢れた涙は、泣いた事すらなかったことにするみたいに、冷たい夜風に凍りついたのか砕けて消えていた。