やっぱり、好きだ。
玉ねぎに涙






 -----------金曜日のある朝。

 自転車通勤のはずの私は、両肘にビニール袋をぶら下げ、両手でダンボールを持ってバス停に立っていた。

 荷物の内訳:ALL玉ねぎ。

 長崎で野菜を作っている叔父さんが、規格外で出荷出来なかった分を大量に送ってくれたのだ。

 ・・・が、一人暮らしの私が全てを消費するのは難しい為、先生方に貰って頂こうと考えたのだ。

 しかし、玉ねぎの重みで肘にはビニールが、指にはダンボールがめり込んで痛い。

 ・・・持ってきすぎたかな。

 若干の後悔をしていると、

 「うわ!!」

 突然、後から誰かが私の腕を引っ張った。

  「何その荷物。学校持ってくの??」

 バランスを崩しかけた私を、青山くんが支える様に、私の腰に手を添えた。

 「あ、おはようございます。叔父が送ってくれた玉ねぎなんですけど、一人じゃ食べ切れなくて、先生方におすそ分けしようかと・・・」

 すぐさま体勢を整え、密着してしまった身体を離す。青山くんは昔から、背中摩ってみたり、頭撫でてみたり、とにかくボディータッチが多い。適度な距離を取って置かないと、思い違いしてまた良からぬ癖が出かねない。私はもう絶対にストーカーにはならない。なりたくない。

 「・・・へぇー。あ、順番どうぞ」

 青山くんは、私がすぐさま後ずさった事が癇に障ったのか、少し顔を歪めると、私たちの後ろに並んでいた人に順番を譲り、私を列から外した。
< 103 / 353 >

この作品をシェア

pagetop