ラララ吉祥寺
芽衣さんの恋
龍古堂の軽トラは、珍しい4人乗りだ。
木島さんは、朝早く西荻窪のお店の近くの駐車場まで行き、車を取って来てくれた。
「荷台は狭いんですけど、人も乗せますからね。さすがに二人乗りじゃ、使い勝手が悪いでしょ。
じゃバンにしろ、って言われましたがこれも味気なくて。
なにしろこの軽トラ、可愛いでしょ」
彼が軽トラに可愛さを求める訳が、わたしには分らなかったけれど、確かに見た目はとても可愛らしい。
「乗り心地はいまいちですけどね、さぁ、どうぞ」
助手席に促されて乗り込んだ。
<ブロロロ……>
軽快なエンジン音を響かせて車が滑り出した。
道路が目の前で、景色がどんどん変わっていく。
軽トラは普通車のようにボンネットが無いので、外の空間との距離が近いのだ。
車は五日市街道を三鷹方面へとグングン進み、途中千川上水に沿って左折し武蔵境通りへ。
中央線線路を越えると、武蔵野日赤はもうすぐそこだった。