おいしい紅茶を飲む前に
馬車の扉が隠すもの
 たくさんの人々が思い思いに進む中を、お姉さまは器用に自分のペースを崩すことなく進んでいく。

見失わないようにするのは、意外と大変なことだった。

でも知らない相手だから、見つかっても言い訳する必要がないと思うと、大胆に追える。


それに、普通のお姉さまなんだから、まさかつけられているとは考えるはずもないし。


 三叉路で視界から消えられてしまったと思ったら、道の隅で背の高い紳士と話をしているのを見つけた。

花束はその紳士の手に移っていて、二人とも楽しそうに笑っている。
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