【完】最期の嘘
第九話『ビター・ミントチョコ』


4月某日。東京ドーム。



そこには、シュガビを一目見ようと集まった十万人ものオーディエンス達がいた。



その列の中には…一人で不安な顔をした汐の姿。



汐の席は『B-12』である。



十分三人の姿を見れる良い席なのだが、それが逆に汐を緊張の渦に包んでいた。



優太を直に見るのは、約四ヶ月ぶりである。



優太は自分を覚えていてくれていないのかもしれない。



本当に一夜限りの関係だったのかもしれない。



それでも、想い続けようと決めた汐は、手汗で湿る左手の掌をジーパンで拭いた。
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