雨音色
眩しく、輝く
「・・・あぁ、おいしかった!」


エリーゼを後にして、二人は再び大学の方へ向かっていた。


時はまだ、昼時のピークを迎えたばかりだった。


通りは昼食を求める人で混雑している。


「藤木さん、どこへ向かっていらっしゃるのですか」


彼女はきょろきょろとあたりを見回した。


「大学の側にある土手です」


「土手?」


「えぇ。実は、そこは僕のお気に入りの場所で、よくそこで昼寝をしたりしてるんですよ」


彼が楽しそうに話し出す。


同じ歩調で、夏の日差しの中を二人は進んで行った。


「春は桜が満開で、夏は青々とした緑の絨毯が出来るんです。

そこで寝転がっていると、本当に幸せな気分になります。

傍には川も流れてて、水の流れが子守唄になるんですよ」


「素敵ですね」


「もうすぐ着きますよ。ここを曲がれば、ほら」


道を曲がると、先ほどまで混み合っていた道とは一点、


閑静な街路樹のアーチがある通りが真っ直ぐに伸びていた。


そして彼が指差した先は、彼女が今までに見てきた絵の中の世界が広がっていた。


「わぁ・・・。東京にもこんな場所があるなんて知らなかった。

絵にしたら、どんなに素晴らしいかしら」


「えぇ。きっと素敵な・・・て、あれ?幸花さんって、おーい」


彼女は土手の柔らかい芝生の上に乗ると履いていた靴を脱いだ。


そして斜面を一気に駆け上り、川に向かって下って行く。

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