平穏な愛の落ち着く場所

4.


『冴子!』

『ただいま、崇。ちょ、ちょっと!?
 なに?どうしたの?』

冴子が出社するなり、
崇は自分のオフィスに彼女を引っ張って
行った。

『おまえ、なんで連絡してたのに
 返事をよこさないんだ!』

朝から苛立っている従兄弟に
冴子は呆れて、あからさまにため息をついた

『あのね、私は今朝、ハネムーンから
 戻ってきた所ですけど?』

『あっ…』

『浩輔がいないのに、気づかなかったの?
 そんなに大事な急用だったの?』

『いや、そういう訳ではないが……』

崇が何を言いたいのかは、冴子には
見当がついている。

『何よ?』

『…のことだ……』

『え?聞こえない、何て言ったの?』

『だから!!千紗の事だよ!』

やっぱりね。
披露宴ではうまく対面させられなかったと
悔やんでいたけれど、崇が千紗を
送って行ったと聞いて、やはり二人は
赤い糸が繋がっていると確信した。

『千紗?』

冴子はわざとらしくならないよう
慎重に答えた。

『とぼけるなよ!あいつが離婚したこと、
 なんで黙ってた?!』

『あら?別れた女の事なんて、
 崇が気にするとは思わなかったわ。
 あなた、来るもの拒まず去るもの追わず
 って、私に宣言していたじゃない?』

『それはそうだが……』

崇は、千紗は…彼女は別だ、と言いそうになって顔をしかめた。
慎重に言葉を選ぼうと、デスクに座った。


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