覚醒者3号-最終調査報告-

哲平

黛さんたっての願いで、肩にしがみつかれたまま、俺は下水道の中を歩き始めた。

…トンネルの壁には、俺の頭上辺りの高さに濡れたような跡が残っている。

恐らく大雨でも降れば、この高さにまで水が溢れるのだろう。

今日は天気が良くてよかった。

こんな場所で水責めにでも遭ったらひとたまりもない。

下水道で溺死なんて、御免こうむりたいところだ。

「地図によると…あっち…」

プリントアウトした地図を見ながら、ななみが指差す。

歳の割には難しい知識を知っていたり、的確な行動をとったり、ななみは俺達よりも頼りになる事がある。

これも機関の施設にいた頃に学習させられた事だろうか。

彼女にとっては思い出したくない過去だろうから、あまり追及はできないが。

「こんな思いまでして何もなかったら、ちょっとガッカリじゃ済まないわよね」

相変わらず足元をしきりに気にしながら黛さんが言う。

「黛さん、予知で敵の気配とかは感じ取れないか?」

「…今のところは何も感じないわ。ますます空振りの予感ね」

確かに。

あんな住宅街のど真ん中から機関へと通じているなどと、今も信じられないくらいだった。

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