さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)【完】
スマートな笑いを見せた舞鶴さんに一礼してから駆け足になろうとした矢先、名前を呼ばれて立ち止まる。
振り向けば舞鶴さんが、


「ひとつ補足。この先君にとっての理想の王子様は現れないかもしれないけど、運命の王子様はいると思うよ」
「……どういうことですか」
「理想が叶わなくても、運命は案外身近にあるんじゃないかってことさ」
「え、まさか自分が王子様とでも言いたいんですか?」
「流れ的にそういう誤解するのも仕方ないが、そういう意味じゃないよ」
「はあ……」


深いような浅いようなまどろっこしい言い回しに困惑させられてしまう。。
よく分からないけれど、これ以上ミツルの怒りのボルテージを上げるわけにはいかない。

舞鶴さんの言葉の真意を明白にすることなく、再び人ごみの方へ足を進めた私は道行く人の間を通り抜けて出店の並ぶ方へ向かいながら、外気に触れてひんやりしている携帯を握りしめた。
そうだ、ミツル達と合流したら社殿を拝みに行こう。
お年玉でお財布も少し厚くなったことだし、今なら奮発してお賽銭500円くらい投げてやっても良い。
そんなことを思いながら、私は通話発信ボタンを押す。


「お前どこにいるんだよ!?何度電話したと思ってんだ!罰金だ罰金!」


言わずとも、この後豪くご立腹なミツルからの雷が電話越しに落とされ、私は後に何度も頭を下げることになったのである。
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