さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)【完】
0時を知らせる鐘が鳴り響いても、ガラスの靴が消えることはない。
なぜなら意地悪な継母や義理の姉がいなければ、灰を被っているわけでもない私は、初めから魔法になんてかかっていなかったからだ。

林檎を丸かじりするのが苦手だから、毒林檎を食して七人の小人に囲まれることもなければ、カナヅチだから大波にさらわれそうになっている王子様を助けることも儘ならない。
それでも私はあなたにとってのお姫様になりたいんです。
あなたが私にとっての王子様であるように。

和泉川先輩が私の手をとって駆けだす。


「ほら、急ぐぞ」
「えっ、ちょっと待ってくださいよー」


幼い頃から思い描いてきた理想のおとぎ話のようにはいかないだろうけど、和泉川先輩となら泣いたり笑ったりしながら色んな苦難を乗り越えて、この現実を私らしいハッピーエンドにできる気がするの。
さあ私の王子様。今日はどんな楽しいことをしましょうか?

何十億分の一の出会いを果たしたお姫様と王子様の恋物語はまだまだ始まったばかり。
だけどこの二人の話は、ひとまずここでおしまい。

さよなら御伽話。
そして、またきて現実。



【めでたしめでたし】
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