結婚に愛はあるのか?
『…一度帰って、また明日来る。

明日は休みだから、朝から来るから。』


オレは愛にそう言って病室を出た。


そして次の日の朝。

午前9時。身支度を済ませたオレは、病院へと車を走らせた。

…病室の前に着き、いつものように二回ノックして、

ドアを開けた。


「・・・愛?」

…シーンと静まり返った病室の中。

窓は開いてて、風がスッと入ってきた。


「・・・愛?」

辺りを見回しても、人の影も形もない。

…それどころか、ベッドの上は、綺麗にベッドメイキングされて、

次の患者を待ってるかのような、そんな感じだった。


「…あら、松田さん?」

たまたま通りかかった看護師に声をかけられた。

この人は、愛の担当ナースだったので、名字は教えていた。


「…あの、愛がいないんですけど、診察ですか?」

「…あれ?8時半過ぎに、松田さんが迎えにくるって言ってたから、

その時帰りましたよ?

・・・何か、勘違いでもしたんじゃ?」

そう言って入ってきた看護師が、ベッドの上の封筒を見つけた。


「・・・松田さん宛みたいだけど」

そう言って困惑の表情を浮かべていた。
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