極上ショコラ【短】
どこからどう見ても、とてもいい雰囲気。


ちらちらとあたし達の様子を窺っていた人達の視線が、言葉よりも雄弁にそう物語っていた。


上品なスーツに身を包んだ篠原の手の下には、背中が大きく開いた真紅のドレス。


その布一枚を隔てた先にセリナさんの肌があるのだと思うと、一瞬でドロドロとした感情が芽生えた。


これって……、嫉妬……?


抱いた感情の呼び名はすぐにわかったけど、こんなにもはっきりと自覚した事は無くて、ただただ戸惑った。


自分がセリナさんと比べられるだけのレベルに達していないのは一目瞭然なのに、沸々と濃くなっていく汚い感情は止まらない。


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