極上ショコラ【短】
「お飲み物はいかがですか?」


笑顔のウェイターから無言でグラスを受け取り、シャンパンを一気に飲み干す。


唖然とする彼のトレイにグラスを戻し、同じ飲み物が注がれているグラスをもう一つ空にした後、その場から性急に離れた。


そのままパーティー会場を出たのは、自分自身を落ち着かせる時間が必要だったから。


すぐ傍にあるパウダールームに入り、ため息混じりに手を洗った。


本来なら顔を洗いたいところだけど、今日はパーティー仕様にしっかりとメイクをしていて、それは叶わない。


どんなにメイクを頑張っても、綺麗な女優の前では存在感なんて皆無なのだけど…。


< 37 / 77 >

この作品をシェア

pagetop