極上ショコラ【短】
「何勝手に帰ろうとしてるんだよ、バカ女」


「……どうしてここにいらっしゃるんですか?」


「はぁ?」


眉を寄せていた篠原の顔に浮かぶ不機嫌の色が濃くなり、鋭い視線を投げられた。


「セリナさんとお泊まりになるんじゃないんですか?」


怯みそうになりながらも、上手く押さえ込めていなかった焦燥感から淡々とした声音が零れ、自然と彼と対峙していた。


「ふざけんな。何で俺があんな女と泊まらねぇといけねぇんだよ。新手の嫌がらせか?」


「ちょっ……!」


言い終わるよりも早く歩き出した篠原は、あたしの腕を掴んだままエレベーターの方へと向かった。


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