極上ショコラ【短】
「放して下さい!」


「抵抗するなら縛るぞ」


低く零された言葉に身の危険を感じたのは、篠原なら本当に実行してしまうのがわかっているから。


あたしが勝手に帰ろうとした事に怒っているのはわかるけど、あまりにもくっきりと見える酷い苛立ちの原因がそれだけだとは考え難い。


ただ、色々と考えてみても他に心当たりは無くて、むしろ怒っているのは自分(アタシ)だって同じなのだ。


あたしには傍にいるように告げたくせに、自分はセリナさんと散々楽しんでいた。


そんな篠原に沸々と苛立ちが込み上げ、エレベーターに乗り込んだところで思い切り手を引っ込めた。


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