祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「キヨ〜♪俺、今日炊事当番だから買い出しに行こっ」

「いいけどケン、びしょ濡れだよ。着替えてからね」

「はいはーい。ちょっと待っててね」




庭から戻ってきたケンは着替えに向かった。


キヨはケンに渡すタオルを取りに洗面所へと駆けていく。




庭ではカゼがまだ1人で水浴びをしている。



「………カンナも遊ぶ?」


「ううん。見てるだけでいいわ」


「………じゃあシャワーみたく俺に水掛けて」




カゼはカンナにホースを差し出す。


カンナはTシャツが濡れて体が透けているカゼに見とれながら、ホースを受け取った。



カゼは輝きながら空から降り注ぐ水滴を見上げていた。




「何かあったの?」



カンナはホースから水を出しながら呟いた。




「………何も。ただ水に濡れてると洗われる気がして」

「服が?失礼ね、ちゃんと洗濯してるわよ」

「………違うよ。心がね。汚れた俺の心を洗い流してくれそうな気がするから」




カンナはカゼがまだ、罪の意識に縛られている事に気付いた。


縛られた跡が心に刻まれて自分を許せないカゼ。





「そんなに自分を責めないでよ。カゼは何も悪くないじゃない」


「………悪いよ。俺は口にしないだけで、心では残酷な事ばかり考えてる。だから心が汚い」




カンナはホースを投げると、びちょびちょに濡れたカゼの体に抱きついた。


カゼの体は水を浴びたせいか、冷えていて冷たい。
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