祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
5人の想いが絡まり

崩れていく音がする。




それが20年間大切にしてきた関係の崩壊の始まりだった。




ゴールデンウイークが終わり、東京に戻った5人の間には気まずい空気だけが流れる。


そんな家の居心地の悪さに耐えられなくなったケンは、イノリの部屋を訪れた。




「ねぇ、何があったの?イノリとキヨは付き合えたんじゃないの?」


「付き合ってねぇよ。俺はキヨとだけは付き合わない」


「…じゃあ俺がもしキヨと付き合えても文句はないんだな?」


「…あぁ、ないよ」




イノリは複雑そうな顔で頷いた。



ケンはイノリの部屋に賃貸の本が散らばっている事に気付く。




「なんで賃貸の本なんか持ってんだ?」



ケンが本を拾うと、既に所々に付箋紙が付いていた。




「…俺はここを出ていく。もうこの馴れ合いに縋ってばかりいられない」


「お前っ…ふざけんな!俺らは馴れ合いで一緒にいるんじゃねぇ!!第2の家族だからだろ!?自分勝手な事ばかりしてんなよ!キヨの気持ちも考えないで!!」


「……勝手にさせてくれよ…俺だって辛いんだ」




ケンは初めて見るイノリの弱い姿に戸惑う。




「なぁお前に何があった?お前は何を隠してる?それを話してくれない限り、この家から出て行かせないよ」



ケンはイノリに視線を合わせ、鋭い目つきでイノリを見る。


イノリはケンにぽつりぽつりと、真実を話し始めた。







20年間一緒に笑い、泣き、共に生きてきた5人。


あんなにそばにいたのに内側を決して明かさなかった彼ら。




大切過ぎる存在は時として

自分を苦しめる存在に変わる。
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