スイートホーム
涼しいお顔立ちで、童顔というのとはまた違うし。


「そりゃ、若い時の写真だから」


何て事を考えていたけれど、小太刀さんがあっけなく正解を発表した。


「姉が大学4年の時に撮影したものだ」


「あ、そうだったんですね」


……10年(以上)も前に撮られたお気に入りのお姉さんの写真を、部屋に飾っているアラサー男性…。


さっきは安堵の気持ちの方が大きくて深く掘り下げて考えなかったけど、小太刀さんてもしかして、かなりのシスコンなのかしら?


しかも玄関先に飾っているという事は「いってきます」と「ただいま」をかかさず言えるようにだよね、きっと。


い、いや、別に、だからといって小太刀さんに幻滅するだなんて事は決してないんだけども…。
「姉がそれ以上年を取る事はないから」


またもや悶々と考えを巡らせ自分の世界に入り込んでいた私は、小太刀さんの次の言葉で一気に現実世界に引き戻された。


「彼女は22歳の時に他界している」


「……え?」


「殺されたんだ。16年前。いわゆるストーカーにな。これはその数ヶ月前に撮られた、姉の生前最後の写真だ」


小太刀さんの発する一言一句をしっかり耳で捉えているのに、私は何も反応が返せない。


ポーカーフェイスで淡々と事実を語る小太刀さんを、フリーズしたままただただ呆然と見つめている事しかできなかった。


「……余計な話をしてしまったな」
< 190 / 290 >

この作品をシェア

pagetop