スイートホーム
小太刀さんにしては珍しく一瞬気まずそうな表情を浮かべた後、すぐにそれを打ち消し、何事もなかったかのように話を再開した。


「これ、約束の湿布薬」


「え?あ…」


「念の為1週間分用意した。痛みがあまりにも長引くようだったらきちんと医者に診てもらった方が良い」


「…はい。ありがとうございます」


何とか自分を取り戻し、私は小太刀さんが差し出してくれていたビニール袋を受け取った。


「お言葉に甘えて使わせていただきます」


「じゃあ、今日の所はこの辺で。悪いがこの後外出するんだ」


「えっ。そ、そうだったんですか」


私は慌てて言葉を繋いだ。


「お出かけ前のお忙しい時にすみませんでした」


「いや。引き留めたのは俺だから」


「それでは失礼いたします」


急いでドアを開け外に出て、改めて小太刀さんに向き合い、会釈しつつドアを閉めた。


そのままぼんやりとしながら歩を進め、階段の踊り場まで来た所で立ち止まる。


私今、衝撃の告白をされたんだよね。


小太刀さんのお姉さんは16年前に亡くなっていた。


しかも、ストーカーに……。


そこでぶるっと体に震えが走った。


何てこと…。


思わず壁に寄りかかり、きつく目を閉じる。


真実を知る前、能天気にあれこれ推測していた自分自身が超絶に恥ずかしい。


私は盛大に自己嫌悪に陥りつつ、深く長いため息を漏らした。
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