スイートホーム
「普通の日勤のOLさんやサラリーマンの中にだって、超激務で深夜に帰宅して早朝に出勤、なんて生活をしてる人もいるんだもんね。それに比べたら、遥かに楽だと思う」


何せ職場が一つ屋根の下にあるんだから。


『そう。まぁ、無理せず頑張ってよ』


「うん。ありがと」


「じゃーね」「おやすみ」と言い合いながら麻美との通話を終え、ケータイをテーブル上に置き、『さて、お風呂に入って来ようかな』と立ち上がろうとしたその時、再び着信音が鳴り響いた。


「はーい。何?」


てっきり麻美が何か言い忘れて、再度かけ直して来たのだと思ったのだけれど…。


『あ…彩希?』


その声を聞いた瞬間、体がフリーズした。


……ちゃんと相手を確認してから出れば良かった。


って、ちょっと待って?


梨華の番号とアドレスは拒否設定にしてあるハズだけど。


『いつの間にか繋がらなくなってたから、お母さんのケータイ借りてかけてるの』


私の心の声が伝わったのか、梨華がそう解説した。


『優さんに聞いたんだ。彩希、先月付けで仕事を辞めたんですってね』


「……何の用?」


ここに来てようやく声を発する事ができた。


私と同じ呼び名で彼を呼ぶ梨華に急激に反発心が沸き起こり、その思いが外部に出力されたのだ。
< 78 / 290 >

この作品をシェア

pagetop