スイートホーム
普段の家事をこなしつつ、その合間に荷造りをして引っ越し業者との打ち合わせをして新生活に必要な物の買い出しをして。


そんなてんやわんやな日々を乗り越え、何とか無事に寮への引っ越しが完了したのは、勤務開始日の前日であった。


「あなたが守家さん?はじめまして」


「これからよろしくね」


奥さんの誘いで荷物の整理の手を休め、休憩の為に管理人室へお邪魔すると、厨房の通いのパートさんである伊藤さんと大塚さんが私を出迎えてくれた。


しかも大塚さんの方は休日にも関わらず、一緒に働く仲間を早く見たいからと、わざわざ足を運んで下さったのだ。


「こちらこそ、明日からよろしくお願いいたします」


「って言っても、私らは田所さんと守家さんの交替要員だから、ほとんどすれ違いの勤務なんだけどね」


「そうなのよね~」


二人は顔を見合せてアハハと笑った。


共に60代後半くらいの、とても気の良さそうな女性達だった。


これで寮で働くスタッフ全員との顔合わせは済んだ。


人数が少ないからこそ気の合わない人がいたりしたら悲惨だったけど、皆さん穏やかで優しそうな方ばかりでホッと一安心。


ちなみに事務補助の方はすでに任務を終えて去った後だったので、結局最後までご挨拶する事はなかった。


寮で食事を提供するのは7時半、12時、19時の三回。


今までは3人で、ローテーションで対応していたらしい。
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