スイートホーム
伊藤さんが相槌を打つ。


「でも、朝早く出勤したり夜遅く帰ったり、通いのお二人はそこが大変ですよね」


「あら、慣れちゃえばそうでもないわよー。どうせ私ら年寄りは、朝5時には目が覚めちゃうんだから」


「そうそう。もう子供達は独立してるし、旦那も食事さえ置いておけば後は自分で適当にやるしね。むしろ、ここに働きに来てるおかげで良い気分転換になってるのよ」


「お小遣いも稼げるし、一石二鳥よね」


私の言葉に大塚さん伊藤さんはそう返答し、陽気に笑った。


「お二人とも、家は近いんですか?」


「えっとねぇ、私はこっから徒歩で7、8分くらいのとこで、伊藤さんは自転車で15分?だったわよね」


「うん」


「そうなんですか…。夜9時過ぎに徒歩や自転車で移動って、ちょっと怖いですよね」


溌剌としていらっしゃるけど、お二人ともご年配だし。


引ったくりのターゲットになりやすいのではないだろうか。


それくらいの時間ならまだまだ人通りはあるけど、突然の事態に周りの人もとっさには反応できないだろうし…。


「あ、私と大塚さんは9時まではいないわよ?」


「え?」


「通いの私らは、夕飯を作り終えたらその時点で帰れるの」


「その後の配膳と後片付けは田所さん夫婦がやってくれてるのよね」


「だから遅番でも7時には上がれるってわけ」


「あ、そうだったんですね」
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