憎悪と、懺悔と、恋慕。
握り拳を震わせながら俯くワタシの手を、
「苦しい思いをさせてゴメン。 オレも親父とまた話し合ってみるから。 困った事とか辛い事があったら、必ず言って。 共有させて。 悪いのは、ウチの親父と早川さんのお母さんと、何も知らなかった早川さんに事実を知らせて、こんな事を強いてるオレで、早川さんは何も悪くない。 だから、全部オレに吐き出して」
木崎センパイが、震えを止める様に握った。
木崎センパイが、、ワタシの手を握ってくれた。
きっとこれが、クリスマスの奇跡なのだろう。
木崎センパイに一生好かれる事のないワタシに、神様がくれた精一杯のプレゼントなのだろう。
「・・・優しくなりましたね、木崎センパイ。 前はワタシの事、敵視してたのに」
手を握られて嬉しいのに、やっぱり切なくて。
今にも出てきそうな涙を、鼻水と一緒に啜り上げて、木崎センパイに笑いながら意地悪を言ってみた。
「・・・正直、早川さんの母親が憎い。 その娘だと思うと、早川さんの事も憎い。 ・・・だけど早川さん、面白くて優しくて・・・凄く良いコだなって思ってる。 だから、そんな早川さんの母親も、実は悪い人じゃないのかもって思えてきて。 ・・・でも、やっぱり赦せなくて・・・。 オレ、こんなに自分の気持ちがわけ分かんない事、初めてだわ」
木崎センパイが、眉を八の字にさせた困り顔を作りながら笑った。