憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「・・・ここのお守り、良く効くんじゃないの?? このお守りと大吉のおみくじ持ってれば、合格するんじゃないの??」

 それでも、やっぱり送りたい。

 往生際悪く、しつこく粘る。

 だって、こんな時間に女のコを1人で帰らせるのは危険だし、オレがもう少し早川さんと一緒に居たいから。

 「しますとも!! しますけど!! ・・・ホントにスイマセン。 ワタシが調子こいてこんな時間にここに来なかったら、木崎センパイが時間を割いてワタシを送る必要もなかったのに。 ごめんなさい。 ごめんなさい」

 早川さんが、顔を歪めて俯いた。

 ・・・謝んないでよ。

 確かにこんな時間まで家に帰らずに、周りに心配をかけたのは良い事とは言えない。

 でも、お守りもおみくじも嬉しかった。

 だって、1人であんな田舎まで行って、神社までの山だって登ってくれたんでしょ??

 「早川さんを送るのは、嫌々じゃない。 オレが送りたいから送るの」

 凝りもせずに、俯いたままの早川さんの髪を撫でた。

 「・・・ありがとうございます、木崎センパイ。 ・・・木崎センパイ、やっぱりおみくじは、ヤラセだろうと何だろうと、大吉を出せば大吉な1年になるんですよ」

 早川さんが、オレを見上げて微笑んだ。

 早川さんの言っている意味は分からないけれど、早川さんがそう思うならそれで良いと思う。

 だって、早川さんが嬉しそうに笑っているから。
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