憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 『2人でお母さんを送っておいで』とお父さんが、ワタシと弟の背中を押した。

 お母さんは、莉玖には見送って欲しいだろうけど、ワタシにはそんな事を思っていないだろう。

 お正月の間、散々逃げ回っていたけれど、最後だと思うとやっぱり淋しい。

 ワタシにも、ちゃんとお母さんを送り出したい気持ちはある。

 だけど、お母さんはワタシを嫌っている。

 ワタシの卒業式や成人式とかの人生の節目でさえ、会いたいと思ってもらえないかもしれない。

 だとしたら、今日で本当にお別れだ。

 『アンタなんか産まなきゃ良かった』

 あの日のお母さんの言葉が過ぎる。

 お母さんとの最後の日。

 最後に、もう1度そんな事を言われたらどうしよう。

 立ち直れる自信がない。
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