臆病者のシーソーゲーム(仮)
「何やってんの?」
それは彼女である萌香(もか)に言ったのか、
私に言ったのか、
離れたところにつっ立ったままの女子に言ったのか。
ともかくここで一番に行動を見せたのは萌香だった。
「悠君!!怖かった!」
私の横をすり抜けて奴に抱き着く萌香。
その萌香は、以前廊下で見た可愛い萌香そのもので、
今さっきまでのいじめっ子は居なかった。
よく状態がわからないのか、奴は抱き着いてきた彼女の背中をトントンと優しく叩きながら、
眉を寄せて私を見る。
「私ね、同じクラスの子が転んじゃったから起こしてあげようとしてたの。
そうしたら…この人が突然来て『ウザイから消えろ』って…」
奴に抱き着いたままスラスラと無い事を説明する萌香。
私も苛められていた子も目を見開いた状態だろう。
しかし、演技派なようで萌香は肩を震わせて泣いているようだ。
萌香は奴の前で可愛い自分のままで居たいようだ。
その可愛い姿を見て奴は萌香と付き合っている訳で。
私が否定すれば、彼らの関係を壊すことになる。