臆病者のシーソーゲーム(仮)
「須藤だ」
須藤……私と堀川が幾度となく聞かれる同中の奴。
「俺、中学時代アイツと同じクラスすらなった事無いのに、
中学時代のアイツの様子とか関係性とか聞かれるんだけど~」
「須藤君は学校の人気者だからね」
愚痴を零す堀川に、美希は『しょうがないよ~』と宥める。
私達の前を歩くクラスメートの女子4人組は、
『悠君だ』なんて小さな声で話している。
どうやらあの中の1人が奴の事を好きなようで、
その子が袋叩きになりそうな勢いで冷やかされている……
奴はこちらを見る事無く、クラスメートの人たちと笑いあいながら教室へ入って行った。
こうやって客観的に見ていると、
奴と私たちは、違う生物の様だ。
この大きな学校と言う動物園で、
私たちが猿ならば奴は何だろう?
私たちと奴が違うという事を……
奴が特別だと言う事を……
同じ人間なのに、奴と私たちに距離を作っているのは誰だろう?
私たち?
奴?
世間?