新緑の癒し手

 しかし後で気付いたのが、彼女と一緒で寝るのが辛いということ。せめてもの救いは、互いに顔を合わせてないことか。それに一人で寝るには十分の大きさだが、二人で寝るには狭過ぎる。彼女はくっつくことに「多分」と言っていたが、寝台の大きさを考えると必然的に密着してしまう。

 また、フィーナはダレスから離れたくない気持ちでいっぱいだったのか、言葉では曖昧な言い方をしていたが、寝台に横たわると同時にフィーナ側から強く抱き着いてくる。背中に感じる、フィーナの心地いい体温。そして、微かに耳に届くのは規則正しい呼吸音だった。

 どうやら安心して寝ることができたのだろう、それについてダレスは安堵感を覚える。だが辛いものは辛く、何よりフィーナに強く抱き締められているので自分の呼吸も結構苦しかった。それでも、フィーナの精神面の安らぎを思えば、これくらい我慢しないといけない。

 それでも慣れない状況に、ダレスはなかなか寝付けないでいた。通常、男女がひとつの寝台に寝るには恋人か夫婦しか考えられないが、ダレスとフィーナは夫婦でなければ恋人同士でもない。

 確かに気持ちは通じ合っているが、ダレスがフィーナに言葉で明確に気持ちを伝えたわけではないので、恋人同士というのは当て嵌まらない。何とも言い難い状況であったが、ダレスはフィーナの頼みを受け入れ一緒に寝ると了承しているので、我慢し続けるしかない。

 一体、何日――

 ふと、そのようなことを考えてしまうが、考えれば考えるほど辛さが増していくので途中で止める。ダレスは溜息を付くと「仕方ない」と言い聞かせ、自分も眠りに付こうとするが、やはり慣れない状況に神経が興奮してしまい、結局熟睡できずに朝を迎えてしまった。
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