ヤマアラシと白ウサギ
森の片隅で
夏が来た。

虫達が楽しげに飛びかう森で、僕たちは出会った。

ガサッ!

飛び出してきたのは君。

驚いたのは僕。

草むらから君を追い掛け、襲い掛かった赤ギツネは、武装した僕に触れてキャン!と鳴いた。

足を庇いながら逃げる赤ギツネを見送っていると、目の端に白いふわふわが見えた。

真っ白な産毛の赤ちゃんウサギ。

恐怖に我を失っているのか、フルフルと震えながら往ったり来たりしている。

僕は武装を解いた。

「ねぇ、ねぇってば、もうキツネはいないよ。」
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