ツンデレくんを呼んでみた。
「でもさあ、カップル揃ってスタバ好きとかってそうそういるもんじゃなくない? 片方がコーヒー好きじゃないとか、甘いもの苦手とか、そういうカップルも少なくないと思うんだよね」

「まあな」

「そうなると、どっちかが無理してこういうお店入ってるんでしょ? なんか、そういうのしてて楽しいのかなあって思っちゃうなあ」

「ふうん」


中出は曖昧に頷きながら舌で自分の唇を舐めた。そしてスマホを取り出してするするといじり始めた。


そういう無意識な仕草が色っぽいってこと、中出は知らないだろうなあと思いながら、そんな中出を眺めた。


「ほんと、世の中のカップルって不思議だわあ。一緒に映画とか見に行って何が楽しいのかね」

「知らん。聞いてみれば」

「あたしは絶対嫌だね。映画は一人で楽しみたいし、相手に合わせてさして興味ない映画見るのも嫌だ。それが同性の友達ならまだ楽しいし許せるけどさ、男と行って何が楽しいのって感じ」

「ふうん」

「なんかさ、そういうの見てると、周りの人に見せつけたいのかなって思うよね。彼氏がイケメンだろうが不細工だろうがどっちでもいいけど、とりあえず彼氏がいるんですって自分の株を上げたいんだろうね。男もそんな感じなのかな。ねえ、中出」

「知らんって。俺もそういうタイプやないし」

「だよねえ。あたし達って、世間一般的な考えから外れてるとこあるよね。好きな人とだったら一緒にいれればどこでもいいって感じだよね。家で一緒にいるだけで幸せってことに、みんな気付かないもんかねえ」

「奈子」

「はい?」

「今そんなこと言われても、説得力ねえよ」


はっとして周りを見てみる。確かに、あたし達も世間でいうデート中だ。


でも、あたしは決して周りに見せつけたいとかそんなことを思ってここに来たのではない。あたしがアップルパイが食べたいと言い出して、中出がシナモンロールを食べたいと言って、結果ここに来たのだ。


というか、目の前の、不細工と言うのはさすがに酷いけど、イケメンというには程遠い目が細くて無愛想な男と一緒にいる姿なんて、極力他人の目に入れたくないとあたしは思っている。ここにいる人達の目の毒だ。
(たぶん中出も同じことを思っている。あたしも美人でないことは重々承知だ)


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