ツンデレくんを呼んでみた。
あたし、飯田奈子と、隣にいる男、中出駿哉は、こう見えて付き合ってもうすぐ一年が経つ。


出会ったのは大学に入ってすぐ、部活が一緒だった。お互い面識はあったけど、一年半以上面と向かって話したことはなかった。


同じ部活だけど接点はほとんどなくて、会話を交わすことはほぼなかった。その間になぜかあたしが中出を好きになり、その後中出から彼女の代わりをしてくれと頼まれた。それからなんだかんだといろんなことを経て、正式に付き合うことになり、今に至る。


付き合う前、というか、『偽』の関係にあった時、あたしは中出がスマホをいじる姿を気にしていたけど、付き合い出してからは中出がスマホをいじっていようがゲームをしていようが気にならなくなった。


ゲームをしていても中出はあたしの話に耳を傾けるだけの気は使っているし、本当にあたしが聞いてほしいと思ったときはスマホをしまってちゃんと聞いてくれるからだ。


そんなあたし達が連絡を取るのは多くて週に一回か二回程度。会うのは半月に一度か二度。最初は連絡を毎日取っていた時期もあったけど、すぐにあたしがめんどくさくなった。中出は一日目からめんどくさかったらしい。


異性と付き合うことは、あたし達の生活の一部であって、全てではない。


お互い学部も違うし、忙しい時期は各々あるし、干渉はよくない。干渉する方もされる方もしんどい。


それに気づいたのは正式に付き合って間もない頃で、あたし達はお互いの生活を最優先することを決めた。


一人暮らしのあたしと実家暮らしの中出、それに性格が全く違うあたし達が付き合うには、それなりの距離を置くことが必要だった。踏み込み過ぎても、遠ざかり過ぎてもいけない。


いくら好き同士が一緒になっても、相手を全て理解することはできないし、相手の気持ちも考えなければならない。


それを、中出と付き合って初めてまともに考えさせられた。


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