ツンデレくんを呼んでみた。
「珍しい」

「え?」

「夜外にいるなんて」


中出があたしの前で振り向かずにぽつりと呟いた。


「文学部の飲みに行ってたの」

「友達いなかったんじゃなかった?」

「失礼な。グループに入ってないだけだよ。友達はちゃんといるから」

「ふうん」


中出はあたしの友人関係にさして興味はないようだ。それきり何も言わなかった。


あたしはコートの前をぎゅっと握りながら、中出の背中をちらりと見た。


中出は華奢だ。背も日本人男性の平均身長並だからあまり大きいとは感じない。


でも後ろ姿はやっぱり男だと思った。


不意に中出の背中に抱き着きたいと思ったけど、実行には移さなかった。


外だし、そんな気力も勇気も度胸もなかった。


さっきのことが思い出されて、頭の芯がずきりと痛んだ。


なんだか中出を騙しているようで息苦しくなる。


小さくため息をついた。


そのまま吸い込むと、冬の空気は思ったよりずっと冷たくて胸の奥まで冷めていくようだった。


火照った体もすっかり冷めきっていた。


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