君が為

「……ん」


目を覚ますと、見慣れない天井が眼に飛び込んできた。
見慣れないのは天井だけじゃない。畳も、隅に置かれている机も、この布団も……知らない物だらけだった。


取り敢えず、私は状況を整理しようと身を起こした。


「何、この服……着物?」


また驚く。
この平成の世に襦袢のような物に身を包んでいるなんて、誰が思うだろう。


軽く混乱を起こしていると、数人の足音が廊下から聞こえてきた。
どんどん近づいて来るそれに、思わず身を硬くする。


足音はピタリとこの部屋の前で止まった。


からりと音を立てて、障子が開かれる。
障子の向こうに居たのは、着物に身を包んだ二人の男の人。


男の人達は私と眼を合わせると、無言のまま部屋に足を踏み入れた。
後手で障子を閉めて、ゆっくりと腰を降ろす。


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