籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


メアリーの悲しそうな顔に、胸が痛む。


近頃は、城へ連れて行かれる人が多い。

突然城の兵士がやってきて、男女問わず無理矢理連行していくのだ。


マルセルは腰をかがめ、メアリーの頭を撫でた。


「心配しなくてもすぐに戻ってくるよ。彼女はただの絵描きなんだから」


彼女が描いていた不思議な絵に、目をつけられたのだろうと察する。

メアリーは一度頷いたが、不安げに掠れた声を出した。


「ママは連れて行かれないかな?」


マルセルは口を閉ざし、目を逸らした。


否定できないのが辛かった。

長く病気を持つ人は、城へ連れて行かれる対象となることもあるためだ。


マルセルは言葉をかけるかわりに胸ポケットからハンカチを取り出し、メアリーの涙を優しく拭った。


「あたしが早く稼げるようになれば、ママをお医者さんに連れて行ってあげられるのに」


「……」


メアリーは静かに涙を流し続け、ハンカチはすっかりぐしょぐしょに濡れてしまった。

マルセルは黙ってメアリーを見つめていたが、やがて立ち上がった。


メアリーが不思議そうに彼を見上げ、マルセルは微笑んで人差し指をたてる。


「君にいいものをあげよう」


マルセルは店の一番奥にある棚へ向かい、たくさんの瓶や木箱が立ち並ぶ中から黄緑色の瓶を取り出した。

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