一匹の猫の7日間の恋物語
タイトル未編集
今私の目の前で大好きな彼の恋人が
殺された...

私は猫だ。
家族も友達も名前も何も持っていない。
今夜も一人路地裏をフラフラと歩いていた。
今は多分夜の10時頃。
当然人が通るはずもなくあたりはとても静かだった。
今日の月は満月で青白く光っていた。
こういうのを確かブルームーンと言う。
そう言えばこの前あの人間が言っていた。
「ブルームーンの日は願い事が叶うんだよ」と...
あの人間とは、あの日車にひかれそうになった私を助けてくれた人間だ。
傷ついた私を看病してくれた。
彼は綺麗な黒髪をしていて、顔も整っている。
そして何より彼の瞳はとても綺麗だった。
彼の瞳に映る世界はとても輝いていて...
好きだった。
大好きだった。
でも、彼には恋人がいた。
恋人の方は私を邪魔者だと思っていたみたいで、彼のいないところでさんざん嫌がらせを受けた。
彼が彼女に私の世話を頼んだ時はご飯をくれなかったり、私が水を嫌いなのを知っていながらお風呂に無理やり連れこんだり。
お風呂上がりでびしょ濡れの私を次の日の朝まで外にだしたり。
だから彼の家を出た。
もともと独りだったのだから、寂しくなんかないはずなのに...
涙が止まらなかった。
大好きな彼の場所を離れるのはとても辛くて、悲しくて...
すごく胸が痛かった...

馴染みの路地のつきあたりで右に曲がる。
ここは私のよく通る場所。
いや、ここだけじゃない。
この街の半分くらいならだいたいわかる。
ずっと、ずっとさまよっていたから。
行くあてもなくずーっと。
ここを曲がれば商店街の大通りに出る。
はずだった...
はずだったというのは、今私の目の前にあるのはいつもの大通りではないということだ。
私の目の前に現れたのは古く小さい神社だった。
路地を一本間違えたのだろうか?
だとしてもこの辺に神社なんてなかったはず。
私は不思議とその神社に興味を持った。
一歩、また一歩と神社に近づく。
神社に足を踏み入れたとき、人間の悲鳴が聞こえた。
どうやらこの神社の中からのようだ。
私は悲鳴の聞こえた方へ向かった。
草影に隠れゆっくりと覗くと、そこには二人の人間がいた。
月が雲で隠れているため顔は良く見えないが、一人は何かを持ったまま立ち尽くしている。
もう一人は地面に倒れていた。
そして徐々に月明かりが顔を出し始めた。
私は驚いた。
そこに倒れていた人間とは、私の大好きな彼の恋人だった
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop