アナタガスキ
「りかちゃん、お返しは何がいい?」
インスタントの粉をカップに入れていると、
背後から抱き締められた。
「何もいらない」
「そう言うと思った」
クスッと笑って彼は私の身体の向きを自分の方へ変えた。
「何がいいかなー」
見上げてすぐに視線を反らす。
やめて、お願い。
そんな風に見つめないで。
まるで愛しくて仕方ないみたいに見えるその瞳は、見つめ返すと胸が苦しくなるの。
「本当にいらないから!」
「あーあ、また機嫌が逆戻りか」
「だから怒ってないし」
「はいはい」
「なに?」
「あーーんして」
いつの間にか彼は手にしていたチョコをまた口の前に差し出した。
「甘いの嫌いなんでしょ!」
彼の手からチョコを奪ってカップに入れる。
私はミルクで割ってホットチョコレートにすればいい。
冷蔵庫から牛乳を取ろうとした手がつかまれた。
「いいや、そうでもないよ」
彼は手を伸ばしてガスの火を止めると、
シンクに両手をついて私を腕の中に閉じ込めた。
「ちょ、ちょっと?」
「りかちゃんはどこを食べても甘いから」
唇を食べるみたいにキスされて、チョコレートより先に私の脳が溶け出す。
「むしろ中毒になってる」
それが本当なら、その毒に侵されて私だけしか見えなくなればいいのに。